NISA、IDeCo、DCて何が違うの? 制度を詳しく解説

資産形成の知識(投資の知識)

長期で資産運用を始める際、現在はNISAやiDeCoといった、税制優遇を受けられる制度が用意されています。これらを活用すると個人の資産形成は有利に進められるので、いまやマストの制度といえるでしょう。しかしながら、投資の初心者にとって、これら制度の違いなど、わかりにくい点もあるかもしれません。ここでは資産形成に便利な各制度の概要を解説します。

NISAは非課税口座内で投資を行う制度 〜株式や投資信託の利益が非課税になる〜

NISA(少額投資非課税制度)は、2014年1月から始まった、少額投資向けの非課税制度です。通常、株式や投資信託などの金融商品に投資した場合、売却益や配当に対して約20%の税金がかかります。しかし、NISAでは銀行や証券会社など金融機関に開設した「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税扱いになります。イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)がモデルになっていて、その日本版としてNISA(Nippon Individual Savings Account)との愛称がつけられました。

なお、NISAには成年が利用できる一般NISA・つみたてNISA、未成年が利用できるジュニアNISAの3種類があり、各制度の概要は下図の通りです。(※)

※参照:金融庁「NISAとは?」

▶2023年までのNISAの概要

NISA(20歳以上) ジュニアNISA
一般NISA つみたてNISA
制度開始 2014年1月から 2018年1月から 2016年4月から
非課税保有期間 5年間 20年間 5年間
※ただし、2023年末以降に非課税期間が終了するものについては、20歳まで非課税で保有を継続可能
年間非課税枠 120万円 40万円 80万円
投資可能商品 上場株式・EFT・公募株式投信・REIT 等 長期・積立・分散投資に
適した一定の投資信託
※金融庁への届出が必要
一般NISAと同じ
買付方法 通常の買付け・積立投資 積立投資(累積投資契約に基づく買付け)のみ 一般NISAと同じ
払出し制限 なし なし あり(18歳まで)
※災害等やむを得ない場合には、非課税での払出し可能。
備考 一般とつみたてNISAは年単位で選択制
2023年1月以降は18歳以上が利用可能
2023年末で終了

一般NISAとつみたてNISAの大きな違いは、「投資対象」「年間非課税枠」「非課税保有期間」の3点です。前者は株式・投資信託などを年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できるのに対して、つみたてNISAは金融庁が認可した「長期・積立・分散」に適した一定の投資信託が投資対象で、年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できます。

なお、ジュニアNISAの新規口座開設は2023年までとされ、2024年以降は新規購入ができません。また、令和5年度税制改正の大綱などにおいて、2024年以降のNISA制度の抜本的拡充・恒久化の方針も示されました。これにより使い勝手も大きく変わる予定で、その内容は別のコラムで取り上げます。

iDeCoは老後のための私的年金制度 〜幅広い税制優遇が魅力〜

iDeCoは、国民年金・厚生年金といった公的年金とは別に給付を受けられる、私的年金制度のひとつ。正式には「個人型確定拠出年金」と呼びますが、英語表記の「individual-type Defined Contribution pension plan」からiDeCoの愛称に決まりました。

対象となるのは基本的に20歳以上65歳未満の方。加入は任意で、加入の申し込みや掛金の拠出・運用はすべて自身で行い、掛け金とその運用益の合計額をもとに、60歳以降に給付として受け取る仕組みです。公的年金と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送るための制度と言えるでしょう。制度自体は2001年から始まっていましたが、2017年1月から自営業者や会社員、公務員、専業主婦(夫)などに加入対象が拡大し、2023年4月末時点で約293万人(※)が利用しています。一方、65歳以上、国民年金保険料を払っていない、国民年金保険料の免除・納付の猶予を受けている、農業年金の加入者はiDeCoを利用することはできません。

参照:iDeCo公式サイト「業務状況」

▶iDeCoの加入資格

加入区分 加入対象となる方 加入対象とならない方
国民年金の
第1号被保険者
20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、フリーランス、学生など ■農業者年金の被保険者
■国民年金の保険料納付を免除(一部免除を含む)されている方(ただし、障害基礎年金を受給されている方等は加入できます)
国民年金の
第2号被保険者
厚生年金の被保険者(会社員、公務員等)* ■お勤め先で加入している企業型確定拠出年金の事業主掛金搬出限度額の範囲内での各月拠出となっていない方
■マッチング拠出(加入者も掛金を任意で拠出)を導入している企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者のの方で、企業型DCでのマッチング拠出を選択した方
国民年金の
第3号被保険者
厚生年金の被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者 ―――
国民年金の
任意加入
被保険者
国民年金に任意で加入した方
・60歳以上65歳未満で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない方
・20歳以上65歳未満の海外移住者で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない方
―――
*65歳以上の厚生年金被保険者で加入期間が120月以上ある方(老齢年金の受給権を有する方)は国民年金の第2号被保険者とはなりません。

参照:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」

銀行や証券会社など「運営管理機関」に専用の口座を開くことで、iDeCoを始められます。ただし、投資信託や定期預金、保険商品など運営管理機関によって取り扱う運用商品は異なるので、口座を開く前に自身が投資したい商品の有無を確かめておきましょう。

なお、運用管理機関は運用商品の説明は行いますが、特定の運用商品をお勧めすることはありません。自分で決めた運用方針に沿って運用商品を選び、複数の商品を運用する場合は掛金に対する配分を決める必要があります。

掛金に関してもルールがあり、最低額は月5,000円(年間6万円)で、1,000円単位で自身の加入資格に沿った限度額の範囲内で設定できます。なお、一度払った掛金は、原則60歳になるまで引き出すことはできません。これは、iDeCoが老後の暮らしを豊かにする年金の一種だからです。

掛金の上限は、自営業者等(第1号被保険者)は月6万8,000円(年間81万6,000円)、会社員・公務員(第2号被保険者)は月1万2,000円~2万3,000円(年間14万4,000円~27万6,000円)、専業主婦(夫)(第3号被保険者)は月2万3,000円(年間27万6,000円)となり、家計などと照らし合わせて具体的な金額は決めていきます。なお、掛金額は1年に1回だけ変更することが可能です。

▶iDeCoの拠出限度額

参照:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)をはじめるまでの5つのポイント」

忘れてならないのは、iDeCoには大きく3つの税制優遇措置が用意されていることです。

優遇措置①:掛金の全額が所得控除
積み立てた金額の全額が所得控除の対象となります。年間合計額がその年の課税所得から差し引かれるので、結果として所得税や住民税が軽減される仕組みです。

優遇措置②:運用利益はすべて非課税
定期預金の利息、投資信託の利益など、運用によって発生した収益はすべて非課税扱いとなります。

優遇措置③:給付時は退職所得控除、公的年金等控除の対象
60歳以降に積み立てた資産を受け取る際、全額を一括で受け取る場合は退職所得控除、分割で受け取る場合は公的年金等控除が適用され、所得税が軽減されます。

以上のように、「掛け金を拠出する時」「運用時」「受取時」の3つのタイミングで、手厚い税制優遇を受けられるのが、iDeCoのメリットと言えるでしょう。

企業が掛け金を拠出する企業型DC、給付内容が決まっているDB

会社員の方であれば、企業型DCやDBといったワードも耳にしたことがあるかもしれません。

加入者自身が掛け金を拠出するiDeCoに対して、企業が拠出するのが企業型DC(企業型拠出年金)です。これは、会社が従業員の退職金や老後の年金の準備のために行う制度で、民間企業に勤める60歳未満の会社員が加入対象です。iDeCoと同じく、運用商品は加入者自身が選び、運用するのが特徴です。2022年3月末時点で、4万2,669事業者が実施し、782万人が加入(※)しています。

iDeCoや企業型DCは、運用の結果によって掛金を下回るリスクがあり、運用商品をみずから選ぶ手間もかかります。これに対して、事業主が従業員と給付内容をあらかじめ約束し、高齢期においてその内容に基づく給付を受け取ることができるのが、DB(確定給付企業年金)です。運用自体は会社が行うので、従業員は資産管理に気を遣わずにすみ、年金の受け取り見込み額を把握できるので、老後の生活設計が立てやすいと言えるでしょう。

かつて、企業年金制度は厚生年金基金などが主流でしたが、徐々にDBにシフトし、2001年に企業型DCが登場してからは、これを導入する企業が増えてきました。現在は、企業型DCとDBが主流になっています。

このように、現在はさまざまな企業・私的年金制度や投資を支援する制度が用意されています。それぞれを組み合わせて使うこともでき、未来の暮らし、老後の暮らしを支えてくれます。制度の中身をしっかり理解し、上手に活用しましょう。

※参照:運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」

関連記事一覧